『水仙とおじいちゃん』
「水仙が、咲いたよ。見においで~」
毎年春になると、おじいちゃんから、こんな手紙がきます。
今年も春休みになるとすぐ、お母さんと一緒に福居の村に帰りました。
駅につくと、おじいちゃんが、
「美穂ちゃん、よくきたね」
笑顔いっぱいで、むかえてくれました。
それから手をつないで、
「なん年生になった?」
「3年生」
「学校、たのしいかい」
「たのしいよ」
「さかあがり、できるかな」
「できないの」
そんな話をしながら、おじいちゃんの家に着きました。わらぶきの大きな家で、いろりがあります。かまどもあります。
あくる日から、おじいちゃんと畑へ行きます。道ばたに咲いている花の名まえを教えてくれたり、レンゲの花でかんむりを作ってわたしの頭にのせたり、草でバッタやトンボを作ってくれたりします。くわで土のおこし方やならし方も見せてくれます。
寝るまえには『かぐや姫』『かちかち山』『安寿と厨子王』『つるのおんがえし』と、昔話もいっぱいしてくれます。こうして、春休みはみるみるすぎてしまいました。
帰る日の朝になると、こん度もおじいちゃんは、はさみをにぎって、わたしはかごを持ってうら山にのぼります。おみやげに、咲かせている水仙をとりに行くからです。
「近所のひとに、あげなさいよ」
ちょきんちょきんと切りました。
「わかった」
「もらったひとは、きれい、いい香り、ありがとう、と言わないかい」
「言う」
「ありがとう、と言われると、美穂ちゃんはどんな感じがする」
「うれしくなる」
「どこで買ってきたのって、きくだろ」
「きく」
「おじいちゃんが作った、とこたえるな」
「こたえる」
「もらったひともうれしくなるし、お礼を言ってもらった美穂ちゃんもうれしくなる。きれいに水仙を咲かせたおじいちゃんも、喜んでもらってうれしくなる」
「うん」
「ほめてもらった水仙も、いっしょうけんめい咲いてよかったと、うれしいはず。水仙で、みんながうれしくなる」
花かごがいっぱいになりました。
おじいちゃんの名まえは、馬吉です。友だちに言うと、めずらしい名まえと笑うけど、みんなが喜ぶ水仙を作っているおじいちゃんは、とてもやさしくてわたしは大好きです。
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